我が普通のトビハゼ
トビハゼは汽水魚だ。
この事実をもっと有名にしなきゃ

やばかった奄美のトビハゼたち

トビハゼ

日本のあちこちの河口にトビハゼはいる。東京にだって名古屋にだって大阪にだって、ちゃんとした干潟があればそこにいる(はず)。 東京以南の河口干潟に広く分布する魚なのに、何故これほどまでに理解されていないのだろう。
奄美大島からきた私の新しいトビハゼたちのエピソードにちょっとおつきあい下さい。
トビハゼ写真4
2001年12月、ある熱帯魚店での出来事。

トントンミーたちの食事でもある冷凍赤虫を買うためにUOTANと二人で立ち寄った熱帯魚店。以前から「店員の応対が最×」と評する人が後を絶たない有名店だ。よって店名は書けない。そこの海水魚コーナーを見ていたUOTANが私に声をかけた。

「トビハゼおるで」
(あれ そこは海水魚コーナーでは、、)
嫌な予感がする中、近づいていくと、UOTANの指さす先、まさにそれはご丁寧に{海水魚です!}と大書した貼紙まである、サンゴやイソギンチャク入りの海水水槽だった。「カワイイ」と売り文句が書いてあったが、海水に沈めておいてカワイイだの言われても。

ご存じだとは思うが、トビハゼにとって純海水での維持は淡水の何十倍も危険だ。仲の良い熱帯魚店ならともかく、ここでこんなものを見てしまうとは。
普通に見かけたなら、もう置き場所のない我が家に連れ帰るのは諦めるところ。だが、今回は事情が違う。ひとめ見ただけで既にちょっと泣きが入りかけ、UOTANに言った。
「ちょおまじでこの水槽、海水やって、サンゴおるし。どないしょ」ぼくらは顔を見合わせた。

この一瞬に3つの手段が頭のなかに流れていった。
その1・店の人に言う>適当にあしらうか無視する
その2・見なかった事にする>かなり心苦しい
その3・連れて帰る>水槽を置く場所が殆どない

低い可能性に賭けて、まず、その1を実行したが予想通りの結果に終わり、失敗。 この時点で強く出たとしても、淡水を入れてもらえる保証はない。
トビハゼ写真2
明日もう一度汽水になったかどうか見に来てもいいが、期待薄な上、1日待てる状態かどうかわからない。

ぼくらは数分間相談の上「その3」を採用する事に決めた。カネモチとは縁遠いぼくらに、ハゼの値段はかなり高く思えた。というか今まで見た平均的価格の倍だった。

ぱっと見て5匹いるように見える。全部持って帰るしかない。 そして店の兄ちゃんに声をかけた。

「トビハゼください 全部」
トビハゼ写真1
店の兄ちゃんが掬いにかかった。
持ち帰り事の揺れと輸送で急激に弱る可能性も考え、予め少し対策しておくべきなのと、今後入荷してくるトビハゼの不幸を減らすために少しでもインパクトをもたせて知識をつけてもらおうと考え、兄ちゃんに言った。
「淡水を半分まぜてください」

フタもせずにタッパーに掬いとる兄ちゃんに不安を感じ、1匹掬うごとに横からタッパーの上をカバーした。店内で干物になっては意味がない。その後、トビハゼは全部で6匹いる事が判明した。
ビニールに入れる段階になって、すごい水量を入れそうだったので、更に
「水少なくていいです」
「その中にウール入れてください」
と注文をつけた。水たぷたぷの状態でつかまるところもなく連れて帰ったら、家についた頃にはひっくり返ってるに違いないからだ。

そうして安全な梱包を施されたトビハゼを抱き、店を後にした。赤虫だけのはずだった買い物は、1万円近い出費となった。正直、財布がひじょーに痛かった。もし水槽に余裕があったとしても、飼うとしたら2匹がいいところだった(この店では買わないけどね)。
トビハゼ写真3
帰ってからも予定外のトビハゼ導入のため直ぐさまあたふたと動く。
新しい汽水水槽のセッティング完了は、大急ぎでも1時間かかった。
そして完成した水槽に、水を切ったトビハゼ入りの袋を口を開けて入れる。

突然海水から50%海水にされた彼等だけど、かわった様子はないのでほっとする。
次にはいきなり25%海水になるのだが、「淡水が一瞬で濃い塩水になる」ことは自然界ではあまりないが、干潟で突然の雨が降ればいきなり淡水にさらされる事もしょっちゅうあるので、少々乱暴だが何日浸かっていたか分からない純海水から早く出してやる事だけを考えた。

トビハゼは袋から出ると、てんでに水中へ潜っていく。
どれもまだ3cm弱~3.5cm程度で、とても小さい。1匹1匹をよく見ると、骨が浮いて見えるほど痩せているものも多かった。ひょっとするとこの中の数匹は回復が難しいかもしれない。

就寝までの数時間、ヒーターによる温度変化がないかしょっちゅう確認しつつ、様子をみる。彼らは警戒しているのか、なかなか陸にあがらない。
寝る前に赤虫を少しあたえてみた。陸に置いたが反応がないので水中に少し落としてみると、数匹が反応して食べた。食べ残しが出そうな気配だったので、ヤドカリの小さいのを1匹、インディアン水槽から引越させて残餌処理をお願いし、就寝。ぼくらのあわただしい1日は終わった。
そして現在、1週間ほど経過。
翌日からみるみる調子をあげていったトビハゼたちは、もうすっかり餌にもぼくらにも慣れた。まだまだ幼い顔の、チビは今のところ元気にやっている。

その後のトビハゼたち

購入後1カ月程度の間に衰弱が酷かった2匹が死亡。

2003.1.31追記
その後、残された4匹は順調に成長を続けて1年強経過、今に至る。
4匹は今や、うちで最も元気で馴れ馴れしい(?)トビハゼとして愛されている。

2003.12.13追記
ついに1匹、死んでしまった。飼育をはじめて約2年目のできごと。
購入時の体長(7cm位?)からみて生後1年は経過していたと思われるが、飼育下で3年はちょっと短いんじゃないか、、、

2004.03.26追記
さらにもう1匹、死んでしまった。うちの相方である魚探君の「老いてる」は、近頃すごい的中率で近い内の死を言い当てるので、その魚探君にこのトビハゼは老いてると言われてヒヤヒヤしていたところ、まともに当たってしまった。
うーん、あと2匹。うち1匹は顔に怪我をしている。
2011年末、思いたってページデザインだけを変更していて気がついた事。最後のトビハゼが死んだ時期を記録しておらず最期の写真も撮らなかったので忘れてしまっています。そのため正確な飼育期間が出せないのですが、だいたい4歳くらいだったのではないかと思います。
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